創薬の未来を拓く新技術:量子インスパイアード最適化で「アロステリックサイト」を高速予測、AOI Biosciencesと東芝が特許取得

従来の創薬と「創薬困難なタンパク質」の壁

現在の薬の開発では、病気に関わるタンパク質の働きを薬で調節するアプローチが一般的です。特に、小さい分子の薬(低分子創薬)では、タンパク質の最も重要な働きをする部分である「活性中心」を狙う方法が主流でした。しかし、この活性中心には薬が結合しにくい形をしていたり、結合しても副作用が出やすかったりするケースが多く、薬の開発対象となるタンパク質が限られてしまうという大きな課題がありました。

このような背景から、活性中心から離れた場所にある「アロステリックサイト」を標的とする創薬が注目されています。アロステリックサイトは、薬が結合することで活性中心の機能に影響を与え、タンパク質の働きを遠隔でコントロールできる部位です。このアプローチは、より特異性の高い(特定のタンパク質だけに作用する)薬や、副作用の少ない薬の開発につながる可能性を秘めています。しかし、アロステリックサイトはタンパク質の表面に明確に現れているわけではないため、その特定には膨大な時間とコストがかかることが、実用化の大きな障壁となっていました。

「SQBM+」が拓くアロステリックサイト予測の新境地

今回特許が登録された技術は、このアロステリックサイト特定の課題を大きく解決するものです。AOI Biosciencesと東芝は、タンパク質の立体構造情報をもとに、東芝の「SQBM+(エスキュービーエムプラス)」という高速計算技術を活用します。SQBM+は、量子コンピューターの研究から生まれた、複雑な問題を効率よく解くためのソリューションで、既存のコンピューターで膨大な組み合わせの中から最適な答えに近いものを短時間で見つけ出すことができます。

このSQBM+を用いることで、タンパク質の内部にあるアロステリック経路を予測・解析し、有望なアロステリックサイトを高い精度で特定できるようになりました。既に知られているアロステリックサイトを用いた検証では、80%以上の精度で予測できることが確認されています。さらに、この技術で予測されたアロステリックサイトを狙った化合物を実際に探索し、その活性が確認されたことも重要な成果です。

この技術によって、これまで多大なコストと労力を要していたアロステリックサイトの探索が効率化され、結果として、これまで創薬が困難とされてきた多くのタンパク質に対しても、新たな薬の開発アプローチが実現できる可能性が大きく広がります。

未来への展開:製薬業界と自社創薬への貢献

AOI Biosciencesと東芝は、この画期的な技術を基盤として、今後の展開を加速させていく計画です。

  1. 製薬企業向けアロステリックサイト予測サービスの提供拡大
    このサービスは既に複数の製薬企業に提供されており、実際の創薬研究の現場でその実用性が確認されています。今後は、さらに多くの製薬企業への提供を進め、新薬開発を支援していくとのことです。
  2. 製薬企業とのアロステリック創薬に関する共同研究
    単に予測技術を提供するだけでなく、製薬企業と連携して具体的な創薬研究を共同で進め、実用化に向けた取り組みを強化していきます。
  3. AOI Biosciencesによる自社創薬の推進
    AOI Biosciencesは、この予測技術を自社の創薬パイプラインに積極的に活用し、独自の新しい薬の創出を目指します。

この技術の発展は、多くの難病に苦しむ人々にとって、新たな治療薬が生まれる希望となるでしょう。AOI Biosciencesと東芝の共同開発によるこの技術が、創薬の未来を大きく変える可能性を秘めていることに、知的なワクワク感を感じずにはいられません。

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