医療現場に革命を!順天堂大学とケアネットが「次世代医療AI・臨床知共創講座」を開設

現代医療が抱える課題とAIの可能性

近年、高齢化の進展により、一人の患者さんが複数の病気を持つ「マルチモビディティ(多疾患併存)」のケースが増加しています。これにより、医療従事者が確認・判断すべき情報が非常に複雑になり、その量は増大の一途をたどっています。また、電子カルテ、診療ガイドライン、薬剤情報、最新の医学論文といった重要な医療情報が、それぞれのシステムや情報源に分散しているため、医師が診療現場で必要な情報を迅速に探し出し、活用することが難しいという課題がありました。

このような状況の中、国内有数の臨床データと専門知識を持つ順天堂大学と、約30年にわたり医療情報の提供とデジタル基盤構築に携わってきたケアネットが手を組みました。両者の強みと最先端のAI・デジタル技術を組み合わせることで、医療従事者の負担を減らし、医療の質と安全性を高める、実用的なAI医療基盤の実装を目指しています。

共同研究の二つの柱:医師の「困った」をAIが解決

この共同研究講座では、主に二つの重要なテーマに取り組んでいます。

1. 臨床支援AIエージェント:医師の強力なパートナーに

一つ目は「臨床支援AIエージェント」の開発です。このAIエージェントとは、人間のように考え、判断し、行動する能力を持つコンピュータープログラムのことです。このAIは、病院内の様々なデータを集約・整理し、患者さんの治療歴、検査結果、併発している病気などの状況に応じて、最適な薬剤情報や最新の診療ガイドライン、関連する医学論文などを瞬時に提示する役割を担います。これにより、医師の情報収集にかかる時間と労力を大幅に削減し、より正確で迅速な意思決定をサポートすることが期待されています。

このシステムは現在研究段階であり、個人情報や研究倫理に十分に配慮した環境で開発が進められています。

2. 医療従事者コミュニティプラットフォーム:知識と経験を共有する場

二つ目は、順天堂大学内の医師同士のつながりを強化し、診療科、医局、学会、関連施設といった組織の壁を越えた連携を促進する「臨床知・集合知の共有基盤」の構築です。集合知とは、多くの専門家の知識や経験を集めることで、個人では到達できない高度な知見や解決策を生み出すことです。ケアネットが長年培ってきた医療従事者ネットワーク構築の経験を活かし、日々の臨床、教育、学会活動、研究の現場で生まれる貴重な知識や経験を蓄積し、共有し、継続的に活用できる仕組みを目指します。

このプラットフォームも現在、構築に向けた研究が進められており、完成すれば、医師たちが互いに学び合い、より良い医療を提供するための強固な基盤となるでしょう。

未来の医療への期待

これらの取り組みを通じて、医療情報と専門家の知識をAIで結びつけることで、医療現場の効率化、医療の質と安全性の向上、そして医療従事者間の連携強化への貢献が期待されています。

順天堂大学の代田浩之学長は、この共同研究が「診療科や施設を超えた集合知の蓄積・共有・相互作用を加速させ、未来の医療現場を支える革新的なイノベーションを創出する」とコメントしています。また、ケアネットの藤井勝博代表取締役社長は、「多忙な医師の臨床意思決定をサポートし、日本の医療の高い質や安全性、医療の持続可能性に貢献できる重要な研究」と語り、実用化後は全国の医療現場への展開を目指すとしています。

この共同研究講座は、2026年7月から2031年6月までの5年間を研究期間としています。

共同研究講座の概要

  • 名称: 次世代医療AI・臨床知共創講座(Juntendo & CareNet Medical AI and Clinical Knowledge Co-creation Department:J-CMAC)

  • 設置機関: 順天堂大学大学院医学研究科 AIインキュベーションファーム

  • 責任者: 矢野裕一朗(総合診療科・教授、AIインキュベーションファーム・センター長 AI推進センター・センター長)

  • 開設日: 2026年7月1日

  • 研究期間: 2026年7月~2031年6月(5年間)

関連情報

  • 順天堂大学大学院医学研究科 AIインキュベーションファームについて

    • 順天堂大学AIインキュベーションファームは、人工知能 (AI)、Internet of Medical Things (IoMT)、デジタルヘルス等に関わる研究・開発・社会実装における産学官民連携の強化、及び産業創出の好循環を生み出す次世代医療エコシステムを形成するため、2021年12月1日に発足しました。

    • 詳細はこちら: https://research-center.juntendo.ac.jp/aif/

  • 株式会社ケアネットについて

本件に関するお問い合わせ先

  • 順天堂大学大学院医学研究科 AIインキュベーションファーム: ecosystem@juntendo.ac.jp

  • 株式会社ケアネット: https://carenet.co.jp/contact/