日本の6G市場、2035年には約48億米ドル規模へ拡大予測
株式会社マーケットリサーチセンターが発表した調査資料によると、日本の6G(第6世代移動通信システム)市場は、2025年の3億9,000万米ドルから2035年には48億2,000万米ドルへと大幅に拡大すると予測されています。この10年間で年平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate、複数年にわたる成長率を平均したもの)28.76%という高い成長が見込まれており、6Gが単なる5Gの次世代規格に留まらず、2030年代の社会・産業インフラを支える国家的な基盤技術として位置づけられていることが示されています。
6Gは、有線・無線、地上・海上・空中・宇宙といった多様なネットワークを統合し、スマートシティ、モビリティ、ロボティクス、医療、製造業、そして没入型デジタルサービスなど、多岐にわたる分野を支える高度な通信基盤となることが期待されています。
6Gが実現する未来の社会
スマートシティとモビリティ
スマートシティでは、自動運転車、監視システム、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサー、公共インフラなどがリアルタイムで連携し、都市全体の効率化と安全性の向上が図られます。例えば、東京や横浜のスマートシティ施策は、6Gの代表的な導入候補とされており、道路交通の最適化、公共安全の強化、エネルギー管理、災害対応、行政サービスの向上など、多数のデバイスを同時接続し、遅延を最小化する用途で6Gの価値が高まるでしょう。
医療分野の革新
医療分野においても、6Gは重要なインフラとなる可能性があります。遠隔患者モニタリングやロボット手術では、通信の遅延や接続切断が患者の安全に直結するため、安定した超低遅延ネットワークが不可欠です。将来的には、リアルタイムの生体データ伝送、遠隔診療、高精細医療画像の共有、ロボット支援手術などが6G活用の主要なユースケースになると考えられます。
産業自動化と製造業
工場では、機械同士がミリ秒単位で連携する必要があり、6Gの超低遅延、高信頼、多数接続、エッジ・クラウド連携といった特性が生産性向上に貢献します。関西やその他の産業集積地域では、ロボティクス、工場自動化、精密製造、プライベートネットワークへの活用が中心になると考えられています。
6Gを支える主要な技術要素
6Gの実現には、以下のような革新的な技術が不可欠とされています。
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テラヘルツ通信: 非常に高い周波数帯を利用することで、超高速通信を実現する技術です。ただし、電波が遮蔽物の影響を受けやすく、到達距離が短いという課題があります。
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再構成可能インテリジェントサーフェス(RIS): 壁面などに設置した特殊な表面で電波の反射方向を制御し、電波が届きにくい場所へ信号を誘導する技術です。都市部の高層ビル群などでの通信を補完する役割が期待されます。
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Massive MIMO: 多数のアンテナ素子を利用して、複数のユーザーと同時に効率的に通信する技術です。高密度な都市部や工場などで多数の端末が集中する環境で重要になります。
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AIネイティブネットワーク: AI(人工知能)がネットワークの設計段階から組み込まれ、トラフィック、周波数、基地局リソース、電力消費などをリアルタイムで自動最適化するネットワークです。これにより、ネットワーク需要が急増しても、人手を介さずに通信品質やエネルギー効率を動的に調整できるようになります。
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非地上系ネットワーク(NTN): 地上基地局だけでなく、衛星、高高度プラットフォーム、航空機などを統合し、海上、山間部、離島、災害地域など、地理的な制約がある場所でも通信を維持することを目指すネットワークです。災害が多い日本にとって、重要な社会インフラとなるでしょう。
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ISAC(通信とセンシングの統合): 通信ネットワークを単にデータ伝送に使うだけでなく、周囲の物体や位置をセンシング(検知)する機能まで統合する技術です。自動運転やロボティクスへの応用が期待されます。
普及への課題と今後の展望
6Gの普及には、投資のタイミング、インフラコスト、技術成熟度、標準化の不確実性、そして端末エコシステムの整備など、複数の課題が存在します。特に、通信トラフィックが100倍に増える場合でも、1ビット当たりの設備投資・運用コストを大幅に低減し、電力消費を抑える「サステナビリティ」が重要な実用化条件とされています。
日本の6G戦略では、2026年から2030年を、5G、エッジコンピューティング、クラウド、IoT、プライベートネットワークを高度化しながら、将来の6G導入に向けて標準化、実証、設備投資を進める準備期間と位置づけています。企業にとっては、まず5Gエッジ基盤を強化し、その後AIネイティブなネットワーク管理、6G対応端末・インフラ・アプリケーションへ段階的に移行する形が現実的と考えられます。
公共・民間共同投資も市場形成に不可欠であり、政府が初期リスクを軽減し、民間企業が技術と商用化能力を提供する形が重要になります。スマートシティ実証、通信会社主導のインフラ試験、大学との共同研究、企業向けプライベートネットワーク、海外ベンダーとの国際協力などが有望な投資モデルとされています。
NTT DOCOMO、Nokia、Ericsson、Huawei、Samsung、LG、Qualcomm、AT&T、Orange、Appleなどが主要企業として挙げられており、国際的なエコシステムとして市場が形成される可能性が高いです。特に、NTT DOCOMOは日本国内の6G技術開発、実証、通信インフラ、標準化連携の中心的存在とされています。
2024年にはNTT DOCOMOなどがAIによって電波を強化する日本初の屋内6G無線試験を実施したとされ、2026年5月にはNTT DOCOMO、NEC、NTTが高速移動する複数車両向けに安定した大容量ミリ波通信を実証したとされています。これらの実証実験は、研究段階の技術が着実に実用化へと向かっていることを示しています。
6Gはスマートフォンの通信規格が単純に置き換わる形ではなく、スマート工場、自動運転、遠隔医療、スマートシティなど、低遅延や大量接続による経済価値が明確なB2B(企業間取引)や公共用途から導入が進み、その後一般消費者向け端末へ広がる可能性が高いでしょう。今後の市場競争では、通信速度だけでなく、「AIによる自律運用」「エネルギー効率」「5Gとの互換性」「衛星を含む広域カバレッジ」「セキュリティ」「端末コスト」「国際標準への適合」が重要になると考えられます。
日本の6G市場で長期的に優位に立つ企業は、単一の通信機器や端末を提供する企業ではなく、AI、無線、エッジ、クラウド、半導体、NTN、スマートシティ、産業システムを相互接続できる企業になる可能性が高いでしょう。特に2026年~2030年の期間に、技術・パートナーシップ・導入実績を確保できる企業が、2030年代の日本6G市場で大きな競争力を持つと考えられます。
調査資料に関するお問い合わせ
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