宇宙の「ゴミ問題」解決へ、BULLのデブリ化防止装置「HORN-L」実証成功
現代の宇宙活動が活発になるにつれて、地球の周りには役割を終えた人工衛星やロケットの残骸といった「宇宙デブリ(宇宙ゴミ)」が増え続けています。これらは稼働中の衛星や宇宙船に衝突するリスクをはらんでおり、宇宙利用の持続可能性を脅かす深刻な問題となっています。
このような背景の中、宇宙デブリ対策事業を手がける株式会社BULLは、宇宙デブリ化防止(PMD:Post-Mission Disposal)装置「HORN」の実証機「HORN-L」が、2026年8月27日(UTC)に地球大気圏へ再突入したことを確認したと発表しました。打ち上げから約2か月半(76日間)で軌道離脱を完遂し、再突入直前の軌道上からの撮影により、最後まで膜面が健全に展開していたことも確認され、この技術が宇宙デブリ問題の解決に大きく貢献する可能性を示しました。

「HORN」とは?宇宙のゴミを減らす画期的な技術
「HORN」は、役割を終えた人工衛星やロケットの上段部を、速やかに地球の軌道から離脱させることを目的とした装置です。特に注目すべきは、その「膜面展開型」という特徴です。扇状に大きく広がる特殊な膜(世界最大級の50㎡相当の展開能力を持つ)を宇宙空間で展開することで、ごくわずかに存在する大気の抵抗を増大させ、対象物をゆっくりと減速させて地球大気圏へ再突入させます。これにより、宇宙空間にデブリとして残り続けることを防ぐのです。
今回の実証では、HORNの展開能力を評価するため、HORN-Lを約20㎡、同時に打ち上げられたHORN-Rを約10㎡の膜面積で運用しました。
実証機「HORN-L」の偉業:軌道離脱と膜面の健全性を確認
2026年6月12日にH3ロケット6号機で打ち上げられたHORN-Lは、今回の実証で以下の2つの重要な成果を達成しました。
1. 軌道離脱の完遂:約2か月半での大気圏再突入
HORN-Lは、打ち上げからわずか76日で地球大気圏へ再突入しました。初期高度約560kmから膜面展開直後から継続的に高度を下げ、大気密度の増加に伴い降下が加速。最終的に、PMD装置に求められる軌道離脱を実際に成立させることが実証されました。
この軌道降下の様子は、LeoLabs社が提供するTLEデータ(Two-Line Element set:人工衛星などの軌道情報を表現するデータフォーマット)によって明確に示されています。HORN-L(ピンクの線)が急速に高度を下げているのに対し、比較対象衛星であるVERTECS(グレーの線、超小型天文衛星VERTECS公式WEBサイト:https://vertecs-project.com/ja/home-jp/)はほぼ初期高度を維持していることが分かります。また、膜面積を約半分にしたHORN-R(水色の線)も同様に降下を継続しており、膜面積に応じた軌道降下速度の差も確認されました。

2. 再突入直前の軌道上撮影で膜面の健全性を確認
再突入の4日前、2026年8月23日(UTC)には、HEOの衛星(HEO 公式WEBサイト:https://www.heospace.com/)による軌道上からの光学撮影に成功しました。これにより、膜面展開から約2か月が経過し、軌道が低下した状態でも、扇状に展開した膜面が破断や大きな変形なく、設計通りの形状を保っていることが確認されました。
これは、宇宙空間特有の厳しい環境要因(原子状酸素や紫外線、熱サイクルなど)や、高度低下に伴い増大する大気による抵抗(空力荷重)に対して、膜面と展開構造が最後まで健全性を維持したことを示す極めて重要なデータです。


今回の成功が意味するもの:宇宙利用の未来への確かな一歩
今回のHORN-Lの実証成功は、単に装置が軌道から離脱したというだけでなく、以下の点で非常に大きな意味を持ちます。
-
PMD装置の機能実証:軌道離脱を「再突入の完遂」まで確認し、その直前まで装置が機能していたことを画像で裏付けたことで、HORNが一連のPMD装置としての機能を果たすことが実証されました。これは、宇宙機の寿命が尽きた後に自ら軌道を離脱するという、持続可能な宇宙利用に不可欠な技術が実現可能であることを示しています。
-
長期的な信頼性の証明:厳しい宇宙環境下で約2か月間、膜面が健全な状態を保ち続けたことは、HORNの設計と素材が、実用化に足る信頼性を持つことを証明しています。これは、将来的に様々な宇宙機に搭載される上での大きな安心材料となります。
今後の展望:HORN-Rの観測継続と社会実装への加速
現在、膜面積を約10㎡としたHORN-Rも継続して軌道降下中です。株式会社BULLは引き続きHORN-Rの軌道降下を観測し、膜面積と軌道降下速度の関係についてさらなるデータの取得・検証を進めていくとのことです。
今回のHORN-Lで得られた「膜面展開から大気圏再突入までの一貫した軌道上データ」は、今後の姿勢軌道シミュレーションモデルの精緻化や軌道離脱性能の評価に活用されます。これにより、顧客の衛星やロケット上段への搭載設計、軌道離脱期間の見積もり精度が向上し、HORNの社会実装と商業展開が加速することでしょう。
株式会社BULLは、「地球内外の惑星間の行き来を『当たり前』に」をビジョンに掲げ、宇宙デブリの発生防止や軌道利活用のための技術開発を進めています。今回のHORN-Lの実証成功は、そのビジョン実現に向けた重要なマイルストーンであり、新たな時代の宇宙開発におけるSDGs(持続可能な開発目標)への貢献が期待されます。

株式会社BULL Founder & CEO 宇藤 恭士氏は、今回の成功について「役割を終えた装置自身が、新たなデブリを残すことなく確実に軌道を去った——PMD装置に求められる本質を、実機で示すことができました。今回得られた一連のデータをもとに、PMD装置の設計・検証プロセスをさらに磨き上げ、世界の宇宙機の標準装備となる装置を一日も早くお届けできるよう、当社一丸となって取り組んでまいります。」とコメントしています。
株式会社BULLについて、さらに詳しく知りたい方は、以下の公式ウェブサイトをご覧ください。
- 株式会社BULL 公式ウェブサイト:https://bull-space.com/
協力会社:
-
LeoLabs社 公式ウェブサイト:https://leolabs.space/
-
HEO 公式ウェブサイト:https://www.heospace.com/


