アフリカの電力事情とサプライチェーンの課題
タンザニアでは、水力発電が電力の約6割を占める主要な電源です。しかし、気候変動による干ばつや水資源の変動、設備の老朽化、送配電網の課題、そして電力需要の増加により、安定した電力供給が大きな課題となっています。世界銀行の報告によると、タンザニアでは停電による損失が企業の年間売上の約15%に相当するという分析もあります。
日本にとってアフリカは、ゴマやコーヒー、カカオといった身近な原料の供給地として重要性を増しています。しかし、電力の不安定さは現地の生産活動に影響を与え、日本へのサプライチェーンにもリスクをもたらしています。また、気候変動は農産物の生産条件そのものも変化させつつあり、東アフリカでは世界の平均気温が産業革命前と比べて1.5~2℃上昇した場合、コーヒーの栽培適性が10~30%低下し、栽培地域がより標高の高い地域へ移動すると予測されています。
このような背景から、生産地の変化や生産量・品質の安定性といったサプライチェーン上のリスクを軽減し、持続可能な調達・供給体制を構築するために、安定した電力の確保と電力そのものの脱炭素化が求められています。

参考資料
- Energy and Water Utilities Regulatory Authority(EWURA)|The Electricity Sub-Sector Regulatory Performance Report for the Financial Year 2024/25(2026年3月): https://www.ewura.go.tz/index.php/publications/performance-report
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World Bank|Tanzania Country Climate and Development Report(2024年12月): https://www.worldbank.org/en/country/tanzania/publication/ccdr
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IPCC|Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability, Chapter 9: Africa(気候変動によるアフリカの水力発電への影響): https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/chapter/chapter-9/
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Wingu Africa|Power Outages, Downtime, and the Real Cost to Tanzanian Businesses(タンザニアの停電による損失に関する分析): https://www.wingu.africa/blogs/power-outages-downtime-and-the-real-cost-to-tanzanian-businesses
UPDATERの「Pole Solar」事業とは
UPDATERは、これらのサプライチェーンの課題に対し、再生可能エネルギーで応える「Pole Solar」事業を展開しています。「Pole Solar」は、海外の生産・調達拠点に安定した電力を供給することで、日本と海外をつなぐサプライチェーンを支えることを目指しています。
この事業では、太陽光発電設備を電力の利用者(需要家)の敷地内に設置する「オンサイトPPA(Power Purchase Agreement)」モデルを採用しています。これは、UPDATERが設備を設置・所有し、需要家は使用した電力に応じて電気料金を支払う仕組みです。送配電網を経由せず、敷地内で発電から消費までが完結するため、系統側の停電や電力不足の影響を抑えることができます。また、需要家が大規模な設備投資を行う負担を軽減しながら、安定した電源を確保できる点が特長です。
再生可能エネルギーの活用は、生産工程における二酸化炭素(CO2)排出量の削減にもつながり、安定供給と脱炭素化という二つの価値を両立させ、持続可能な調達・供給体制の構築を後押しします。

現在はタンザニアを中心に事業を展開していますが、2029年までにはケニア、ウガンダ、ルワンダなどへの展開も計画しており、2030年度までにアフリカ全域で発電容量1GWの分散型電源構築を目指しています。
「Pole Solar」は、事業拡大だけでなく、社会的な影響(ソーシャルインパクト)も重視しています。日本国内で寿命前に使用を終えたリユース太陽光パネルを性能検査した上で活用し、将来的な大量廃棄を見据えた資源循環に取り組んでいます。さらに、発電設備の設置・保守・運用を担う現地エンジニアの採用・育成にも力を入れており、電力インフラの整備を通じて、地域の人々が電気エンジニアとしての技術を身につけ、質の高い雇用につながる機会を広げていくことも目指しています。
戦略的パートナーシップの具体的な取り組み
今回の戦略的パートナーシップは、UPDATERとPhotons Energyのそれぞれの強みを補完し合うことを目的としています。UPDATERはプロジェクトファイナンス(特定のプロジェクトからの収益を返済原資とする資金調達)、PPAストラクチャリング(電力購入契約の設計)、カーボンクレジット開発、資産保有を担います。一方、Photons Energyは営業開拓、技術実現性調査、EPC(設計・調達・建設を請け負うこと)、O&M(運用・保守)、現地オペレーションを担当します。

このパートナーシップにより、両社はオンサイトPPAだけでなく、以下の新領域での協業も拡大していきます。
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産業用太陽光発電のさらなる拡大: 2028年3月までに累計導入容量10MW(メガワット)を共同目標とし、双方向での案件創出を目指します。
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太陽光ポンプの共同展開: 農業・灌漑・上水道分野への拡大も視野に入れ、太陽光を活用したポンプソリューションを展開します。
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クックストーブ分野での協業検討: 学校や病院などの施設向けに、燃料使用量や煙の発生を抑える高効率型クックストーブ(薪や炭などを燃料とする調理用かまど)ソリューションの協業可能性を探ります。
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水上太陽光発電の共同開発: 農業用ため池が多いタンザニアや東アフリカ市場で、水上太陽光発電プロジェクトの開発・展開を検討します。
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中古太陽光パネルのリユース・回収・リサイクル: 中古パネルの責任あるリユースを推進し、使用済みパネルの回収・管理・再生・リサイクルの仕組みづくりに協力することで、資源循環と環境持続性に貢献します。
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カーボンクレジットの共同開発: 再生可能エネルギー、省エネ、クリーンクッキング、リサイクルといった気候関連プロジェクトから生まれるカーボンクレジット(温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして発行し、取引できる仕組み)の共同開発を進めます。
Photons Energy Ltdについて
Photons Energy Ltdは、2012年に設立されたタンザニアの企業です。太陽光発電システムのEPC(設計・調達・建設)、オフグリッド(電力網に接続しない独立型)やミニグリッド(小規模な電力網)の構築、太陽光給水・太陽熱システム、運用・保守(O&M)などを手掛けています。
- コーポレートサイト: https://photonsenergy.com/
関係者コメント
Pole Solar事業のプロジェクトマネージャーであるFathia Jombi氏は、今回の協業について「タンザニアのエネルギーの未来に情熱を注ぐ一人として、UPDATERとPhotons Energyのこの協業をとても嬉しく思っています。このパートナーシップによって、農村地域やザンジバルを含むタンザニア全土に、信頼できる持続可能なエネルギーが広がっていくと信じています。」とコメントしています。

株式会社UPDATERについて
UPDATERは、2021年10月1日にみんな電力株式会社から社名変更しました。法人・個人向けにトレーサビリティや透明性を軸にしたサービスを提供し、社会課題解決に取り組んでいます。脱炭素事業「みんな電力」をはじめ、労働市場をウェルビーイングで変革する「みんなワークス」、ブランドのエシカル度を評価・公表する「Shift C」など、多岐にわたるSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)サービスを展開しています。
- コーポレートサイト: https://www.updater.co.jp/
まとめ
UPDATERとPhotons Energyの戦略的パートナーシップは、アフリカの電力課題解決と持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩です。分散型電源の構築、リユースパネルの活用、現地雇用の創出、そして多様な新領域での協業を通じて、電力の安定供給と脱炭素化を両立させ、地域社会に新たな価値と未来をもたらすことが期待されます。2030年度までの1GW目標達成に向けた両社の取り組みに、今後も注目が集まるでしょう。



