再生可能エネルギーの「お墨付き」が世界を変える?2032年には約8.4兆円市場へ急成長

再生可能エネルギー証書(RECs)とは?

再生可能エネルギー証書(RECs:Renewable Energy Credits)は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーで発電された電力の「環境価値」を証明する特別な証明書です。具体的には、1メガワット時(MWh)の再生可能エネルギーが発電され、電力網に供給されるごとに1つの証書が発行されます。この証書には、どの種類の再生可能エネルギー源(例:太陽光、風力)、どこで、いつ発電されたかといった情報が記録されており、同じ環境価値が二重に利用されることを防ぐ仕組みが確立されています。

RECsは、電力と一体で提供される「バンドル型」と、環境価値だけを電力とは別に取引する「アンバンドル型」に分けられます。主に、各国で義務付けられている再生可能エネルギーの利用比率を満たしたい電力会社や、自社の事業活動で排出される温室効果ガス(特に電力使用に伴う「Scope 2排出量」)を削減し、「ネットゼロ」を目指す企業、公共機関などがこの証書を求めています。

RECsの最大のポイントは、企業や組織が再生可能エネルギーを直接導入していなくても、その環境価値を購入することで、再生可能エネルギーの普及に貢献し、自社の環境目標を達成できる点にあります。これは、環境貢献の「見える化」と、市場を通じた再生可能エネルギーへの投資促進に大きく貢献しています。

驚異的な成長を遂げるRECs市場

YH Research株式会社の調査によると、世界の再生可能エネルギー証書市場は急速な拡大を続けています。2025年には161.2億米ドルだった市場規模が、2026年には204.4億米ドルに達し、2032年には845.6億米ドル(日本円で約8.4兆円)にまで成長すると予測されています。これは、2026年から2032年までの年平均成長率(CAGR)が26.7%という非常に高い数値を示しています。

世界の再生可能エネルギー証書市場規模(百万米ドル)、2025 VS 2032

この急成長の背景には、各国政府による再生可能エネルギー利用義務の強化、企業が設定するScope 2排出量削減目標やネットゼロ目標の拡大、そして世界的な再生可能エネルギー発電設備の増加があります。特に、中国のGreen Electricity Certificate(GEC)の本格的な発行や、欧州のGuarantees of Origin(GO)、I-REC型制度の普及、データセンターや半導体、自動車産業など、大量の電力を消費する業界でのグリーン電力調達の動きが市場を強く押し上げています。

この市場価値は、物理的な電力の販売額ではなく、再生可能電力の環境的な価値と、その取引や管理に関連するサービスの価値を指しています。証書の価格は、地域の需給バランス、発電源の種類、発電された年など、様々な要因によって変動します。

市場を牽引する主要プレイヤーと多様な活用法

再生可能エネルギー証書市場には、大規模な再生可能エネルギー発電施設を持つ総合エネルギー企業、電力や環境商品の専門トレーダー、そして企業向けに気候変動対策ソリューションを提供する事業者が参入しています。

主要な企業としては、Iberdrola、NextEra Energy Resources、ENGIE、EDF、SPIC、CTG、Ørsted、Vattenfallといった、豊富な発電ポートフォリオを持つ企業が、グリーン料金や電力購入契約(PPA)を通じて証書を供給しています。また、STX Group、Shell Energy、Targray、Redshaw Advisorsなどは、証書の流動性や価格形成、国境を越えた調達、リスク管理といった面で市場を支えています。さらに、Schneider Electric、3Degrees、Anew Climate、South Pole、ClimeCo、Ecohz、REDEX、CBEEXなどは、企業の調達戦略立案から、証書の登録・償却、報告までを支援するサービスを提供しています。

世界の再生可能エネルギー証書主要企業上位20社ランキング(2025年の市場ポジションに基づく。随時更新)

再生可能エネルギー証書市場は、エネルギー源によって「太陽光RECs」「風力RECs」「水力RECs」「バイオマス・地熱・その他RECs」に分類されます。また、需要の観点からは、「規制対応型市場調達」(義務達成のため)、「企業による自主的調達」(自社の目標達成のため)、「電力会社・アグリゲーターによるポートフォリオ管理」、「小売・公共部門におけるグリーン認証・環境主張」といった用途で利用されています。

世界の再生可能エネルギー証書市場(製品タイプ別・用途別)

世界的な脱炭素化の流れや、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の拡大、そして企業が再生可能エネルギー利用目標を強化していることから、RECsは再生可能エネルギーの利用実績を証明するための重要な市場メカニズムとして機能しています。

世界各地で加速するグリーン化の波

地域別に見ると、RECs市場の発展状況は様々です。

  • 北米:州ごとの再生可能エネルギーポートフォリオ基準(RPS)やクリーンエネルギー基準(CES)に対応する需要と、企業の自主的な調達が活発で、世界で最も成熟した市場の一つです。

  • 欧州:Guarantees of Origin(GO)を中心に、国境を越えた取引や電力会社の電源開示、再生可能エネルギー電力購入契約(PPA)が普及しており、より詳細な時間単位のデータや品質ラベルへの関心が高まっています。

  • アジア太平洋:最も速い成長を遂げている地域です。中国のGEC、日本・韓国の非化石価値証書、東南アジアのI-REC型調達、オーストラリアのREGOなどが市場を牽引しており、グローバル製造業のサプライチェーンにおける脱炭素要件が需要を押し上げています。

  • 中南米:風力、太陽光、水力といった再生可能エネルギー資源が豊富で、国際企業向けの供給拠点として成長が見込まれています。

  • 中東・アフリカ:現状の市場規模はまだ小さいものの、グリーン水素プロジェクト、輸出型製造業、再生可能エネルギープロジェクトの資金調達、国際認証といった分野で新たな需要が生まれる機会市場として注目されています。

世界の再生可能エネルギー証書市場(地域別ランドスケープ)

各地域の証書は完全に代替可能ではなく、登録制度や適格範囲、発電年、電源分類、輸入制限、企業会計ルールなどが利用の可否や価値に影響を与えるため、地域ごとの専門知識を持つ仲介・助言サービスが重要になっています。

再生可能エネルギー証書が描く未来

再生可能エネルギー証書を巡る産業チェーンは、大きく「上流」「中流」「下流」に分けられます。

  • 上流:再生可能エネルギー発電所(太陽光、風力、水力など)が電力を生産し、その発電量を正確に計測するデータが起点となります。適格性を判断する規制制度や認証機関、そして証書を発行するための登録簿システムがこの段階に含まれます。

  • 中流:検証された発電量に基づいて証書が発行され、取引所やブローカー、アグリゲーター(集約者)などを通じて取引されます。この段階では、証書の移転、価格形成、ポートフォリオ構築、リスク管理、そして最終的な償却(消費)が行われます。API連携による自動償却や、時間単位でのデータ照合、登録簿間の相互運用性といった技術が、市場の信頼性と効率性を高める上で重要性を増しています。

  • 下流:証書を購入し利用する主体です。これには、再生可能エネルギーの利用義務を果たす電力会社、RE100(事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際イニシアティブ)やネットゼロ目標を持つ企業、政府・公共機関、データセンター、製造業、そしてグリーン製品のサプライチェーンなどが含まれます。

再生可能エネルギー証書 産業チェーン分析

RECsはすでに実用化されている市場メカニズムであり、その取引や関連サービスは日々進化しています。信頼性の高い市場を構築するためには、発電量計測から環境価値の主張まで一貫したデータの透明性、明確な所有権、そして償却記録の確実性が不可欠です。今後、より多くの企業や組織が脱炭素社会の実現に向けて動き出す中で、再生可能エネルギー証書は、その目標達成を支援する強力なツールとして、ますますその存在感を高めていくことでしょう。

本記事の内容は、YH Research株式会社の調査レポート「グローバル再生可能エネルギー証書のトップ会社の市場シェアおよびランキング 2026」のデータを基に作成されています。

詳細はこちらで確認できます。
https://www.yhresearch.co.jp/reports/1304673/renewable-energy-credits–recs