SD-AgentFoundryとは?AIエージェント研究の新たな扉
「SD-AgentFoundry」は、AIエージェントの研究と開発を加速させるための土台として設計されました。AIエージェントとは、自律的に環境を認識し、推論し、行動する人工知能のことです。近年、LLM(大規模言語モデル:人間のような自然な文章を理解し、生成するAI)やVLM(視覚言語モデル:画像とテキストの両方を理解し、視覚情報に基づいて判断するAI)の進化により、AIエージェントは「危険なら逃げる」といった単純なルールを超え、より複雑な判断やコミュニケーションを自ら行えるようになっています。
この基盤は、大きく2つの部分から構成されています。
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SD-AgentFoundry-2D: 複数のLLMエージェントが2次元の仮想空間でコミュニケーションを取り、集団で行動する様子をシミュレーションします。これは、災害時の情報伝播や避難行動、都市や施設における人の流れといった社会現象のモデル化に役立ちます。
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SD-AgentFoundry-3D: VLMエージェントが3Dデジタルツイン(現実世界の物理的なものやプロセスを仮想空間に再現したもの)の中を、まるで人間の目で見ているかのように移動し、視覚情報に基づいて判断・行動する様子をシミュレーションします。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」のデジタルツインを使ったデモでは、「JAXAロゴを探して近づく」といったタスクを実行できます。
なぜ今、この研究基盤が必要なのか?
これまでのAIエージェント研究では、大規模な計算環境やクラウド上の高価なモデルサービス、専用のシミュレーターが必要となることが多く、研究のハードルが高いという課題がありました。その結果、「AIが何を認識し、どう推論し、それがどのような行動に変換されたのか」という、AIの思考プロセスが見えにくくなる傾向がありました。
「SD-AgentFoundry」は、こうした状況を解決するために開発されました。機能の多さよりも、AIエージェントの「認識→推論→コミュニケーション→行動→観察」という一連のループを追いやすいように、最小限の構成で設計されています。これにより、学生や研究者、エンジニアがAIエージェントの原理を深く理解し、自由に改変しながら研究やプロトタイピングを進めることが可能になります。
SD-AgentFoundryの主な特徴
この基盤は、利用者がAIエージェントの挙動を深く探求できるよう、いくつかの特徴を持っています。
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ローカル環境での実行: macOS、Windows、Linuxといった手元のPCで動作し、クラウドAPIに依存せず、オープンなLLM/VLM(Ollama経由)を利用できます。これにより、コストを抑えつつ、利用者がモデルや計算環境を自由に選択できます。
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透明性の高い設計: 複雑なシステムとしてブラックボックス化するのではなく、AIエージェントの思考と行動の各プロセスを追跡しやすいコード構成になっています。
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高い柔軟性: 2Dシミュレーションではシナリオやエージェント設定を、3Dシミュレーションでは3Dシーン(USD形式)、タスク、VLMのバックエンドなどを自由に置き換えられます。これにより、多様な研究テーマに対応できます。
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詳細なログ機能: 3D版ではVLMの応答、解釈された行動、行動前後の姿勢、推論時間、入力画像などが記録され、AIエージェントがなぜそのように動いたのかを後から検証できます。2D版もエージェントの記憶や推論、メッセージをログとして保存します。
将来への応用と研究の現在地
「SD-AgentFoundry」は、教育、研究、そしてPoC(概念実証:新しいアイデアが実現可能かを確認する初期検証)の初期検討を主な用途としています。例えば、災害時の情報伝播や集団行動に関する仮説生成、都市や施設における人流や施設選択の探索的検討、デジタルツイン上での視覚探索やナビゲーションの研究などが想定されます。
ただし、このシミュレーションの出力は、人間の行動や実世界の結果を検証済みの精度で予測するものではありません。あくまで仮説生成やメカニズム比較、シナリオ検討を目的とした研究基盤であり、実社会に関する具体的な結論を導くには、別途、実証データによる検証が必要です。これは、この技術がまだ研究段階であることを明確に示しています。
開発者である兵頭博士は、今後、さまざまなLLM/VLMやデジタルツイン環境との接続、エージェント評価手法の拡充、そして複数エージェントと3D環境を組み合わせた検証などを進める予定です。スペースデータは、この研究を通じて得られる知見を、宇宙開発から都市開発、防災、施設運用など、多様な実世界課題に対するAIエージェント技術の可能性を探索し、「空間知能」(空間を情報化し、AIに物理を学ばせ、機械が自律的に動けるようにする技術)の実現を目指しています。
開発者コメント
スペースデータの最高科学責任者(CSO)である兵頭龍樹博士は、次のように述べています。
「AIエージェントの活用の可能性は、社会シミュレーションから、一人称視点で環境を認識し行動するシミュレーションまで、多岐にわたります。今回、LLMやVLMを用いたAIエージェントが何を認識し、どう判断し、どのような行動につなげるのかを、できるだけシンプルで追いやすい形で試せる環境としてSD-AgentFoundryを構築しました。研究者や学生、開発者の皆さまが、2Dの社会的な相互作用から3Dデジタルツイン上の身体性を伴う行動まで、自分たちの課題や環境に合わせて自由にアイデアや仮説を試し、発展させていく出発点になればと考え、公開を決めました。また、この基盤を出発点として、スペースデータにおける事業化に向けた研究開発にもつなげていきたいと考えています。」
技術論文・リポジトリ情報
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論文タイトル: Minimal Local Simulation Foundations for LLM- and VLM-Driven Agents in 2D and 3D Environments
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著者: 兵頭龍樹(株式会社スペースデータ/立教大学大学院 人工知能科学研究科/東京科学大学 地球生命研究所/パリ・シテ大学)
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公開: arXiv(cs.MA / cs.AI)、2026年8月24日
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DOI: 10.48550/arXiv.2608.22833
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SD-AgentFoundry-2D(GitHub): https://github.com/ryukih/SD-AgentFoundry-2D
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SD-AgentFoundry-3D(GitHub): https://github.com/ryukih/SD-AgentFoundry-3D
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ライセンス: Apache License 2.0
株式会社スペースデータについて
株式会社スペースデータは、「宇宙の民主化」を使命に、宇宙をはじめとするあらゆる空間の知能化(MAKE SPACE INTELLIGENT)に取り組むテクノロジースタートアップです。空間を情報化し、AIに物理を学ばせ、機械が自律的に動けるようにする「空間知能」の技術を活用し、宇宙開発から都市開発、防災、安全保障まで、次の未来を支えるデジタルプラットフォームの構築を進めています。
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