なぜロボットに「触覚」が必要なのか?
部品を正確に差し込んだり、ケーブルを扱ったりする際、人は目で位置を確認するだけでなく、指先に伝わる抵抗や接触の変化を感じ取り、力加減を調整しています。しかし、従来のロボット学習では、映像や動きのデータが中心で、この「触覚」情報を十分に活用できていませんでした。
ロボットが人間のように器用に作業をこなすためには、この触覚情報が不可欠です。しかし、触覚センサーを取り付けるだけでなく、映像や動作データとの時間合わせ、データ形式の整理、そして学習ソフトウェアへの接続など、多くの技術的な課題がありました。特に、人が実演して集めた触覚データと、ロボット側で取得する触覚データをうまく連携させるのが難しい点でした。
commissureの触覚統合プラットフォームが解決する課題
commissureが開発を進める「Physical AIの模倣学習を加速するアドオン型触覚統合プラットフォーム」は、この触覚データの「収集側」と「実行側」を共通のデータでつなぐことに焦点を当てています。具体的には、以下のハードウェアとソフトウェアを開発する計画です。
触覚モジュール「HaptoAtom」(ハプトアトム)
ロボットの指先や、人が作業を実演してデータを集める機器「UMIデバイス」(Universal Manipulation Interface:カメラを備えた手持ち型グリッパーで人の作業を記録する仕組み)の指先に後付けできる、薄型・軽量の触覚モジュールです。接触面の圧力分布を捉え、収集側と実行側で共通の読み出し方式・データ形式を目指します。これにより、既存のデバイス構成を最小限の変更で触覚センシング(触覚情報を感知する技術)が可能になります。
統合ソフトウェア「HaptoConnect」(ハプトコネクト)
触覚データを映像や動作データと時刻同期させ、ロボット学習に利用できる形にするソフトウェアです。UMI方式でのデータ収集に対応し、学習フレームワーク「LeRobot」やシミュレータ「Isaac Sim」への出力・接続を通じて、データ取得から学習・評価までの一連の手順を効率化します。
このプラットフォームにより、研究者や企業は触覚を使ったデータ収集・学習を始める際の作業負担を大幅に減らすことができます。これは、今まで難しかった人の繊細な触覚情報をロボットが学習できる形に変換し、模倣学習(人が実演した動作をロボットが真似て学ぶこと)を加速する点で画期的な技術です。
本事業では、公開可能なデータセット、学習済みモデル、データ仕様を研究コミュニティへ共有し、触覚を取り入れたロボット学習の研究と実用化を後押しする計画です。
NEDO「NEP躍進コース3000」とは
NEDO Entrepreneurs Program(NEP)は、創業前から創業初期の起業家候補人材を育成・支援する事業です。その中でも「躍進コース3000」は、ディープテック分野(深層技術分野)の具体的な技術シーズとビジネスモデルを持つ事業者を対象に、事業化可能性の調査や研究開発、実証を支援します。
本コースでは、最大3,000万円の補助金(補助率100%)と、事業化支援の専門家である「カタライザー」による助言、研修、経理支援が12ヶ月間提供されます。これにより、技術の事業化と事業の拡大が強力にサポートされます。
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NEDO 2026年度公募情報: https://www.nedo.go.jp/koubo/CA2_100514.html
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NEP躍進コース: https://nep.nedo.go.jp/yakushin
フィジカルAIによる社会課題解決への展望
commissureは、人の作業を携帯型デバイスで記録し、ロボット学習や導入検討に利用できるデータへ加工する「UMIデータ取得サービス」を提供しています。今回の触覚技術をUMIによるデータ取得と組み合わせることで、接触や力加減が作業結果を左右するような、より複雑な工程への対応範囲を広げていきます。
目指すのは、現場ごとに対象作業と成功条件を定め、データの収集・加工・品質評価から、モデルの学習、ロボットでの実機検証までを一貫して支援できる体制です。これにより、製造現場の反復作業や熟練者の技能をPhysical AIが担うことで、人手不足や技能継承の課題に応えることが期待されます。
この技術は現在、研究開発段階であり、差し込みやコネクターの接続といったワイヤーハーネスに関わる作業を検証対象として、研究機関での試験導入を通じて実際の使いやすさと作業への適用可能性を確かめていく予定です。
創業者コメント
溝橋 正輝(株式会社commissure 代表取締役CEO)

「私たちは、研究で培った触覚技術を、現場で働く人や事業を支える技術に育てたいと考えています。大切なのは、技術を開発するだけでなく、人手不足や技能継承に悩む現場で、ロボットが一つでも作業を担えるようにすることです。今回の採択を契機に、UMIによるデータ取得から学習・実機検証までをつなぎ、企業の皆さまと具体的な現場での実証を重ねていきます。研究成果を製品・サービスとして届ける機会を増やし、フィジカルAI領域での事業拡大に取り組んでまいります。」
堀江 新(株式会社commissure 代表取締役CTO/博士(工学))

「人は物に触れたときの抵抗や接触の変化を感じながら、手の動かし方や力加減を調整しています。そういった触覚情報を、UMIで人の実演から集めるとともに、ロボットが実行するときに扱える必要があります。本プロジェクトではそのための触覚モジュールと、学習につなぐソフトウェアを一緒に開発します。研究者や企業が触覚を取り入れた実験を始めやすい環境を整え、公開できる成果をコミュニティと共有しながら、現場の作業に役立つ技術へと磨いていきます。」
株式会社commissureについて

株式会社commissureは、東京大学で培われた触覚・身体情報学の研究を基盤に、ロボティクスとPhysical AIの社会実装に取り組むスタートアップ企業です。独自カリキュラムによる人材育成、要件に合わせた技術設計、現場での触覚データ取得、現場環境に合わせた実装まで、企業や研究機関の課題と段階に応じ、開発から導入まで幅広く支援しています。
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commissure公式サイト: https://commissure.co.jp/
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お問い合わせフォーム: https://commissure.co.jp/#section-form



